こんにちは。皆さんは、「南方貨物線」ってご存知ですか？名古屋に住んだことがある人はご存知かもしれませが、多くの人が初耳かと思います。今回はこの「南方貨物線」についてご紹介します。

南方貨物線は名古屋最大の未成線

「南方貨物線」というのは鉄道路線（貨物線）なのですが、実は一度も列車が通ったことがない未成線なのです。しかも路線の殆どが建設されたのに、途中で計画が中止となったことで多くの未成線の跡があちこちに残りました。

南方貨物線は、国鉄が戦後愛知県内の貨物線（東海道本線の支線扱い）として計画した路線てす。愛知県名古屋市中川区の「名古屋貨物ターミナル駅」から「笠寺駅」を経由し「大府駅」へと向かう部分の工事が着工され、ほとんど完成に近い状態となりました（延伸する計画もあった）。しかし1983年に国鉄の財政難や周辺住民の反対（騒音問題など）があり結局計画が中止となりました。

未だに残る未成線の跡

工事がかなり進んだ状態で中止となったため、現在も名古屋市南部にはあちこちで南方貨物線の跡が見られます。今回は名古屋市内に残る「南方貨物線」の痕跡をご紹介します。

大高駅〜笠寺駅に残る謎の空間

JR東海道本線の大高駅から笠寺駅を眺めていると何やら線路の外側に不自然な空間があります。これこそが南方貨物線の痕跡の始まりです。実は笠寺駅から大高駅の区間は、南方貨物線と東海道本線が並走する予定でした。南方貨物線を設置するために東海道本線の線路の面積を広めにとったものの、計画だとん挫したためそのまま不自然なスペースとして残った訳です。

住宅街に溶け込んだ未成線

さて、いよいよ未成線の高架区間へと入っていきます。大高駅方面から笠寺駅へと東海道本線に並走してきた南方貨物線は、笠寺駅から東海道本線へと西側へと進みます（東海道新幹線に沿っています）。山崎川を西へと渡った先の住宅街にはとんでもない光景が見られます。

△建物に埋まった南方貨物線の高架（名古屋市南区豊田2丁目）

なんと南方貨物線の高架が建物の中に埋まっています。この辺りは住宅街なのですが、高架の跡が至る所に残っています。おそらくですが、解体費用が残るのでそのまま活用しようということのなったのでしょう。

未成線跡が再利用？！

△会社の建物として活用されている南方貨物線跡（名古屋市南区豊田２丁目）

南方貨物線は北西へと進んでいきます。しばらくは東海道新幹線に沿っているので地図で見てもわかりやすいと思います。画像をご覧ください。南方貨物線の上に会社の小屋のようなものが建てられています。未成線の高架跡にこんな活用方法があったとは笑。

さらに新幹線に沿って西へと進んでいきます。名古屋を代表する河川「堀川」を渡ると南方貨物線の痕跡がしばらく少なくなります。ここから先は運河を埋め立てて造られた公園「南郊公園」（南方貨物線と紛らわしい笑！）に沿って南方貨物線が建設されましたが、残念ながらここ数十年の間に多くが解体・撤去されてしまいました。かつては未成線の高架下にお店などが並ぶ光景が見られました。

しかしここから先、市道「江川線」に突き当たったところに面白いものが見られます。

△南方貨物線の高架がカラフルに塗られて大きな広告になっている。斬新な活用法だ（笑）

なんと南方貨物線の高架がカラフルに塗られて大きな広告になっているではありませんか。未成線がこんな風に活用されているのは鉄道ファンとしては嬉しいですね！後ろの団地にもいい感じに溶け込んでいて、このあたりの雰囲気が筆者は好みです。[

幻の貨物線立体交差

冒頭に述べた通り、南方貨物線は名古屋市中川区から笠寺駅まで高架で結ぶ計画だったのですが、途中の名古屋市港区で「名古屋港線」という貨物線と交差することとなりました。「名古屋港線」は現在も現役の貨物線で、週に３往復ほど貨物列車がまだ走っています。南方貨物線計画が実現していれば、二つの貨物線が立体交差するという面白い光景が見れたかもしれません。

△南方貨物線を横目に走る名古屋港線の貨物列車。2つの路線はここで立体交差する予定であった。

ここから先、南方貨物線は「あおなみ線」の荒子駅のあたりにある「名古屋貨物ターミナル駅」へと向かいます。ここから先も至る所に未成線の痕跡が見られるので探してみてください。

未成線探索の面白さ

鉄道ファンの中には廃線となった路線跡を歩く「廃線探索」をする人も多いです。しかし、南方貨物線のような未成線の跡を歩くのはまた違った面白さがあります。未成線には列車が一度も通ったことがないのが廃線との違いです。「ここにもし貨物列車が通っていたら…」なんて想像をしながら歩いてみるととても面白いウォーキングになります。今回ご紹介した南方貨物線はほとんど名古屋の住宅街を通っているので、公道からも見学しやすく巡りやすいです。皆さんも一度、名古屋最大の未成線「南方貨物線」をご覧になってみては？

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